14.分割法

 分割とは一つの拍を表裏二つに分ける方法です。曲中リタルダンドをはっきりと指示したいときなど用途は幅広いのですが、不用意に使うと煩雑(はんざつ)でかえって分かり難い指揮になってしまいます。

♪A分割

A分割

 この分割は表拍で停止した後、裏拍を跳ね上げによって表す方法です。裏拍の跳ね上げのスピードが次小節の頭の予備運動も兼ねるため、特にフレーズがリタルダンドしていった先、次の小節がまったく異なったテンポで開始される場合などに用います。図は四分の四拍子において4拍目を分割した場合ですが、A分割はこのようにその小節の最終拍における分割が主な用途といって良いでしょう。とりあえず形を頭に入れて置きましょう。

♪B分割

B分割

 A分割に対し、B分割は表拍を停止せず、点後の運動も付随します。同じ軌道を二度なぞるような形になります。描く軌道の延長ががA分割より長くなりますので、その分テンポも遅くなりますが、もたもたと描いていては、図の場合四分の四拍子が都合四分の五拍子と化してしまいますので、4拍目はなるべく軌道を短く、スピードも上げて描くようにしてください。また、ゆっくりとした四分の四拍子においては、すべての拍を分割することも珍しくありません。ちょっと複雑になってしまっていますが、このような感じになります(モーツァルト、交響曲第39番の第一楽章冒頭など)。

B分割/四分の四拍子

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