7.間接運動③・しゃくい

 「しゃくい」とは、物を杓う(ひしゃくで水を汲む)ような動きであることからそう名付けられました。運動の性質としては平均運動と叩きのちょうど中間にあたります。

 基本姿勢は、右手の肘の位置が左肩のちょうど前に来るようにもってきます。そしてそこで肘を90度に曲げて右の前腕が顔の左側に垂直に来るようにし、棒は、平均運動のときのもち方で、手の甲を相手側に、手のひらを自分側にして構えます。格好としては、ちょうど自分から見て顔の周りを棒→右手前腕→右手上腕→右肩の順に逆コの字型に囲むようになるはずです。この状態をまず作るのが大変だと思います。立ち方がしっかりしていないと(つまり右半身を前に出し、左半身を後ろに少し引く、という「斜の構え」ですが)右肩が変に突っ張ってしまいますので注意してください。

 これが左側の位置として、次は右に来たときです。右手を肩の高さまで上げ、やはり肘を直角に曲げ、棒は横に持ちます。ここでもコの字を作るようにします。この右の位置と先ほどの左の位置を往復することになります。

 往復の軌道が大変重要ですのでゆっくりやってみましょう。まず左側の位置に構えて、そこから肘を伸ばします。腕は肩の高さでまっすぐ左前方に伸びるはずです。このとき棒もまっすぐに持ちます。棒をまっすぐに持ったまま右肩を中心にぐるっと半円を描いて右に腕・指揮棒が一直線に伸びた上体へ持ってきます。半円を描くとき、軌道が楕円にならないよう、できるだけ下の方を通るように注意しましょう。右の肩の高さまできたら上腕はそのまま、前腕が肘を中心に直角まで上がります。4分の1円を描く感じです。そしてその動きにつれて棒はまっすぐから横持ちに変化します。

 しゃくいは丸い軌道を描きながらも、加速減速の差が最も激しい動作です。特に下を通るとき、トップスピードになることを意識します。同時に奏者に音を出させるのは、このトップスピードに来る所だ、と念じてください。このスピード感を演出するためには逆にその前後の脱力が重要です。脱力してこそ自然な加減速を得ることができるからです。まずは棒を持って行うのが難しければ、棒無しでも構わないので、腕の振り子運動の感覚を早いうちに身に染み込ませるようにお勧めいたします。

目 次